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2019年6月28日 (金)

世界一と言われた映画館

ちょっと前の話になりますがヒカリ座でドキュメンタリー映画見てきた。

大杉漣さんがナレーションを担当されている。それだけでもう、ああこれは間違いない作品だと思える。

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このタイトルを見たとき、あの映画館のことだな、と、思い出した本がある。

 

書店員時代に新刊で入荷し、やたら長いタイトルが気になって目を通した。

『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田に作った男はなぜ忘れ去られたのか』

佐藤久一という、山形の名家の長男に生まれながら後は継がず、奔放に生きた男の伝記。

彼が二十歳で支配人に就任したのが、伝説の映画館「グリーンハウス」だった。

 

かける作品の選択眼はもちろん、上映ごとに変わる大看板や、当時まだ珍しかった回転扉。

高級ファッションアイテムをそろえたショーウィンドウ、床に座ってお弁当を食べる人がいたほどゴージャスで清潔なトイレ。

ロビーには東京から仕入れたオールドビーンズのコーヒーの香り、場内は生花を飾って花の香りをただよわせる念の入れよう。

映画だけでなく音楽会も催されたという、今では信じられないような文化空間。

淀川長治氏をして「酒田の人がうらやましい」と言わしめ、東京と同時ロードショーを張るほどだったという。

 

その映画館が、酒田大火の火元になったことで人々の記憶の中に封印され、話題にすることすら暗黙のタブーとされてきた。

しかし、酒田の人々は夢のようなその場所のことを決して忘れたわけではなかった。

むしろ閉じ込めたせいで色あせることもなく、鮮やかに保存されていたのかもしれない。

 

大火から40年を経て、ようやく呪縛は効力を失いつつあるのか。

『世界一と言われた映画館』は2017年山形ドキュメンタリー映画祭で上映された、

在りし日のグリーンハウスを語る関係者の証言を集めたフィルムである。

 

久一の良き協力者でもあり、火災の第一発見者となったバーのマスター。

消火にあたった元消防職員。

作品を紹介する小冊子「グリーンニュース」のコレクションをずっと保管していた女性客。

元チケットガールによって語られる久一の人柄と、彼女が営む店に集い続けた当時の常連たち。

足しげく通った当時の高校生は、ついに酒田に劇場を作った。

その胸に熾火のようにくすぶり続けた記憶が、堰を切ってあふれた作品。

グリーンハウスが語り継がれることを、久一も淀川さんも、喜んでいるだろう。

 

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