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2013年12月19日 (木)

霧降文庫で買った本のこと

オリオン☆一箱古本市で出会いました。

いわゆる装丁買いというやつですなぁ。

元新聞記者さんの社会派な本棚にあって、一輪の花のように見えたのです。

 

『恋愛論』竹久夢二  太田出版

 

 

一目見てわかる特徴的な女性の絵があまりにもイメージを固定化してしまってますが、

むしろわたしは画業よりも、彼の図案家としての仕事を高く買っています。

ハンカチ、便箋などにプリントされた、草花や鳥の可憐なことといったら。眠る乙女心に火が付きますわ。(←意を決して女語尾)

 

そんな夢二の「言語分野」をまとめた本だと思われます。

 

よく見るといろいろ凝ってるんですよ。レタリング風の書名著者名を皮切りに、

表紙と見返しに使ってる水色のこんにゃくみたいな用紙とか、ドラマチックな口絵写真に乗せてる濃いピンクの文字とか。言葉の断片を区切るのにや☆を使うとか、章題の文字の大きさとか。

 

 

で、あらためてクレジットを探すと装丁は東良美季さん。

 

この名前、季刊レポ読者およびレポTV視聴者なら見覚えがおありかと思います。

 

北尾トロ編集長がライター特集でぜひにと執筆をお願いした記事で、ベテランライターの涙を絞り、若手ライターたちを震え上がらせた(?)ライターで編集者の東良さん。(とある情報源にはAV監督という肩書も発見!)

 

 

レポ最新14号の「80年代エロ本文化」特集で、本橋信宏さんとの深く濃い対談記事が掲載され、またもや話題を呼んでます。

 

 

そして構成・編集は森田富生さん。

 森田さんこそまさしく80年代のエッジィな雑誌を牽引した、白夜書房「写真時代」の創刊編集長ですよ。おふたりがタッグを組んでこの夢二本を作ったのは19937月のこと。
このあたりの雑誌界のディープな趨勢は、レポ14号で!(と、宣伝も挟んでおく)

 

それにしても絶妙なタイミングで出会ってしまいましたねぇ。本に呼ばれたなぁと、感慨もひとしおです。

 

最初にレポTV に登場されたときかな?新しい雑誌を作りたい、というようなこともちらっと言っておられたので、今後の活動展開も楽しみですね。

 

 

 

ところで『恋愛論』ですが、半分を少し過ぎたあたりに

 

 

「いいえ、希望なんてそんなに遠くありませんわ。あなたの足元に花が咲いていますわ。あなたのお国には、片袖にただなんとなく時雨かな、と言って右の足で左の足の跡を消しながら逃げ歩いて死んだ詩人がありましたのね」

 

 

という記述があり、右の足で左の足の跡を消しながらという表現がたいへん気になったので、ちょいと検索してみました。

 

 

 両袖にただ何となく時雨かな    惟然

 

 

『恋愛論』では「片袖」になってますが、おそらくこれが本歌というか、もとの句と思われます。

 

惟然というのは、商家に養子入りしたものの、商人に向かず、39歳で妻子を捨てて出家した人物。

芭蕉に心酔して門下となり、その最期をみとったそうです。

その後、芭蕉の発句を和讃に仕立てた念仏を唱えて諸国を行脚したとか。

すると「右の足で左の足の跡を・・・」というのは、この、ヒョウタンを打ちならしながら踊っているようにも見えたという風羅念仏のこととも思えます。

 

 

時雨の句がどんなシチュエーションで読まれたのか、また惟然がどんな亡くなり方をしたのかは分かりませんでしたが、久しぶりに会った娘を

 

 

おもたさの雪はらえどもはらえども

 

 

という句で拒絶して立ち去り、娘はその句で父の思いを察し、出家して傍に仕えたそうです。そんな逸話の残る惟然という人と、そこまでして求めた俳句の世界とは何だったのかに、興味がわいてきたところです。

 

 

夢二からはだいぶ脱線してしまいましたが、読書にはこんなふうに、横道に逸れる楽しさもあるということが、伝わっていたら嬉しいです。

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