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2010年12月

2010年12月15日 (水)

川上澄生 木版画の世界 展 

先日、栃木県立美術館へ行ってきました。

川上澄生といえば、帆船やランプなどの異国情緒ゆたかな作風と、
彼の代表作「初夏の風」が、棟方志功が版画家を志すきっかけになったことがよく知られています。

若いうちにアラスカを放浪し、その後は宇都宮の女子高で英語教師をしながら
制作を続けました。
つまり、彼にとって版画は、収入を得るための手段ではなかったということです。

作品にどこか鷹揚な空気感が漂っているのはそのためでしょうか。

あちこちで書いたりしゃべったりしていますが、
わたしは川上澄生を、高校の図書館で手に取った詩集によって知りました。

版画は全く見ずに、まずその「詩」だけを読んで、
独特なリズムと情緒とに、引き込まれたのです。

正しい鑑賞方法ではなかったかもしれません。
しかし、ヴィジュアルとひき離された言葉はむしろ
イマジネーションを制約することなく、こころに響きました。

なかでも印象深いのは次の一篇。

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我はかつて詩人たりしか

ひそかに今も尚 我は詩人なりと思へるなり

詩人は常に文字以て詩を書かざるべからざるか

我は今 詩情を絵画に託す

あな哀れ 我が詩情は詩とならずして絵画となるなり

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「川上澄生 木版画の世界」展は栃木県立美術館で、12/23まで開催中。。。

http://www.art.pref.tochigi.lg.jp/jp/exhibition/t101030/index.html

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2010年12月 6日 (月)

お屋敷と蓄音機 ② ~日本の近代建築~ 

11/29 旧安田邸での蓄音機コンサートにいってきました。その話の続きです。

古い建物だから防寒をしっかり、という南陀楼さんの忠告を素直に聞いて、
タートルネックのセーターの上にマント型のコートを羽織り、バッグには膝掛けとストールという装備。
電車内は暖房が聞いてて、千駄木の駅に降りたときは、涼しさのあまりホッとしたくらい。

地上に出るともうすっかり暗くなっています。小腹もすいてきたので、
交差点の角の雰囲気ある喫茶店【千駄木倶楽部】に入ります。
シアトル系にも行きますけど、どちらかといえばこういうお店がすきです。
チーズケーキとコーヒー(五番)でヒトゴコチ。ふう。やっぱり東京は遠いなぁ。

団子坂を上り、右に曲がると街灯もささやかで、ちゃんと会場にたどりつけるのか
不安がよぎりますが、隣の特養ホームがいい目印になってくれました。

大きな木のある前庭、明るく照らされた受付で名前を告げると、
プログラムと手荷物預り用の番号札が手渡されます。
玄関の沓脱ぎ石があまりに立派で、そこに靴を脱いで上がろうとしたわたしは、
スタッフに「ここまで靴でいいんですよ」と言われてしまうのでした。ちょっと恥ずかしい。
でも実際、ここだけでひとり暮らしできそうなくらい広い玄関なのです。

黒光りする床材や柱。建具の美しい細工。
庭に面してずらりと並んだ、歩くと揺らいで見える板ガラス。
大正7年上棟ですから、岩崎俊弥が旭硝子を創設して10年ちょっと。
ようやく国産品が出回るようになったころではないでしょうか。
伝統の職人技と当時の最先端技術が随所に取り入れられて、見どころ満載のお屋敷です。
お庭では山茶花かなにかが、白い花をたくさんつけています。でも、暗くてよく見えない。
庭も見たいし、外からもお屋敷を見てみたい。こんどは昼間に来なきゃ。

演奏会場となる応接室は、洋間とはいえわりとシンプルです。
柱の上部に施された彫刻や天井の漆喰装飾は、
これまでに見てきた旧朝香宮邸や旧前田侯爵邸などの、
いわゆる洋館のものとは違う印象を受けました。

外観は和風で統一されたお屋敷の一室であるということもありますが、
施主の藤田好三郎氏は、財力にものを言わせて豪華なものを見せびらかしたり、
腕のいい職人たちを集めて好き勝手に奇をてらったものをつくらせるような普請道楽ではなく、
地に足のついた理想の家族像を持ち、そこを目指して生活するための場としてここを設計したのでしょう。

さて、洋間の前方に据えられている、高さ1メートルくらいの四角い木の箱が今夜の主役、1910年代の米国製蓄音機です。
蓄音機のトレードマークともいうべきラッパはなく、天板はピアノのようにつっかい棒で支え、
正面の2段になった扉が観音開きになっていて、レコード収納棚を備えた家具調タイプのものでした。

蓄音機を囲むように、最前列に座布団、つぎに低いイス、スタッキングできる背もたれのないイスが並んでいます。40席ほどあるでしょうか。
壁際の重厚なソファは、ここの調度品のようです、臙脂のいい色にくすんでいます。
草色というか、オリーブグリーン系の色のカーテンはなんと、創建当時のものがそのままだそうです。

頭まで寄り掛かれる大きなソファに、すでに何人かの先客が。
わたしは蓄音機に向かって左手壁際の背もたれのないイスを選びました。
持参のひざかけをイスに敷き、コートはスカートのように巻きつけ、肩にストールという防寒態勢。
使い捨てカイロも配られていましたが、栃木の冷え込みに比べれば、やはり東京はあったかいのです。

              * * * * * コメントへつづく

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2010年12月 4日 (土)

お屋敷と蓄音機 ~日本のジャズを聴く~ ①

去る11月29日に行ってきたイベントのお話です。
かなり広がりのある話なので、数回に分けて書きたいと思います。
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その一

なんてぜいたくな企画なんでしょう。
千駄木・旧安田邸は、日本ナショナルトラストが保存管理する、大正期の貴重な近代和風建築。
ここの洋風応接室で、このお屋敷に残されていた1910年代の米国製蓄音機による音楽会。しかも解説付きで、昭和初期の日本ジャズのレコードを聴かせてくれるというのです。
建築好き、レトロ趣味、音楽も好きなわたしの嗜好をみごと串刺しにしてくれてます。

そもそもは、ブラタモリを見たのがきっかけでした。
【住まい】をテーマにしたその回で、いまも残る長屋や洋館とともに紹介されたのが旧安田楠雄邸。
もともとは「豊島園」の創設者、藤田好三郎が建てた屋敷だったそうです。
外観は和風ですが、一間だけ、応接室として洋間を作るのが当時のステイタスだったのだとか。

とても印象に残り、番組を見たあとパソコンで調べたら、季節の行事などのイベントも行っている様子。
そして一番近い開催が「不忍ブックストリート」主催の上記イベントだったというわけです。

不忍ブックストリートといえば、あの【一箱古本市】の生みの親、南陀楼綾繁さんが
中心となって活動している「不忍・本と散歩が似合う街」プロジェクトです。

そして一箱古本市といえば、わたしが約1年前わざわざ広島まで出掛けていって
北尾トロさんや湊かなえさんのトークショーと一緒に楽しんだ、
本好きによる本好きのためのフリーマーケットのことですよ。

思わぬところで興味ある分野がリンクしたこのイベント、
これはぜひ行かねば。と、すぐに予約の手続きをしたのでした。

して、ジャズレコードの演奏会なのに、何故ブックストリートが主催かと言えば、
『日本・スウィングタイム』(講談社)刊行記念、と銘打っているではありませんか。
南陀楼さんがこの本のことを知り、旧安田邸にある蓄音機と結びつけたご縁なのだそうです。

ええと、ジャズは好きだし、昭和の歌謡曲とかもけっこう知ってる方だけど、
戦前の日本のジャズ?だいじょうぶか、わたし。

というわけで、ちょっとだけ予習をしました。
曲の解説をしてくださるのが『日本・スウィングタイム』(講談社)の著者・毛利眞人さん。
プロフィールによると1972生まれ、あ、同い年。そしてNHKラジオ深夜便で「懐かしのSP盤コーナー」…
あーこのひと知ってる! 深夜便で古いレコード紹介してる人。
童謡歌手特集のときに、お祖母さまか大おばさまが小さいころ童謡歌手だったとかいう話を聞いてすごくおもしろかったの覚えてる。
わたしと同い年なのに、アンカーも驚くほど言葉遣いが異常に丁寧で、
だけどわざとらしくないというか、謙譲語を慣れた感じで自然に使いこなしてて、
実家がお寺だとかそんな話もしてたから、すごく印象に残ってた。。。
あのひとが古い日本のジャズの本を出したのか~。すごいなぁ。

それにしても、不思議なくらいどんどん話がつながっていく、
偶然というには出来すぎな興味のいもづる現象です。

              ************つづく。

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