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2009年1月

2009年1月25日 (日)

記念碑的1972。

『ミーナの行進』 小川洋子 著  中央公論新社

この回想録で語られる1972年は、何を隠そう私が生まれた年である。
山陽新幹線、新大阪ー岡山間が開通し、川端康成が自殺し、ミュンヘンオリンピックで男子バレーボール日本チームが金メダルを獲り、ジャコビニ彗星が大接近するも流星雨は見られなかった、という。
これらエピソードの、一つとして私は知らなかった。

ミュンヘンオリンピックが開催されたということだけは、同級生に「みゆ」という子がいて、名前の由来を得意げに聞かされたから覚えていたが、金メダルのことも、ましてやイスラエル選手団が襲われたテロ事件のことも、恥ずかしながらこの本で初めて知った次第である。

というわけで、朋子とミーナの成長譚もさることながら、実際にあったエピソードと絡めての展開が、じつに興味深かった。
小川さんの作品では、映画化もされ話題になった『博士の愛した数式』も、プロ野球阪神戦と江夏投手のエピソードが巧みに盛り込まれていたが、詳細に下調べした出来事と物語をシンクロさせていく過程を想像すると、なんだかちょっとわくわくする。

この物語は大人になった朋子の回想であり、喘息持ちの従妹のミーナがマッチ箱に閉じ込めたおはなしのように、いつでも取り出して懐かしむことのできる「宝物の時間」である。
寺田順三さんの装丁・挿画とともに、夢のような一年間を味わえる一冊。
大人向けメルヘンともいえるし、朋子やミーナと同年代の少女たちにも読んで欲しい。中学生の読書感想文用教材にうってつけではなかろうか。

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2009年1月11日 (日)

『ピューンの花』

小さいころに読んだ思い出のあるお話。
ふとしたことで、題名がわかった。
主人公の名前を、覚えている人がいたのだ。

風の子ピューン。
そこから探したらあっという間に見つかった。
でも、もう本屋で買うことはできない。
地元の図書館へ探しに行った。

『ピューンの花』平塚武二童話全集1 童心社 初版1972年

検索機によると、閉架書庫にあるらしい。
カウンターで申し出ると、普通に借りることができた。
どうして閉架なんだろう、、、
まあ、童話の個人全集なんて厚くて重いから、
児童書の棚にあっても手に取る子供は少ないだろうし、
資料として借りに来るおとなもいるようには思えないもんな。
図書館だって棚には限りがあるのだ、古くてあまり読まれない本は
書庫にしまっちゃうんだろう。

さて、この第1集30編は、コロボックルの佐藤さとる氏が選定したそうだ。
以下目次より抜粋。

・ふしぎなちから ・にじが出た ・われた ちゃわん 
・月のとけい ・ゆりこのでんしゃ ・オバカチャン
・すてきなサーカス ・かざぐるまをまわす かぜ

などなど、、、

知育的なお話。メルヘンチックなお話。叙景的なお話。
自らの体験を投影したような、物語性のあるお話。
バラエティに富んでいて、どれも、なんというか、すっきりしている。
理屈っぽくなく、へんに感傷的でもなく、どこか粋な感じがするのだ。

自然、声を出して読みたくなった。
日本語としても、きれいとか丁寧なだけじゃなく、かっこいい。
こんなにいいお話が、いまはもうあまり読まれないなんて残念だな。
姪っ子(甥もいます)たちに、読み聞かせてあげたいなぁ。

「ピューンの花」は、いたずらな風の精のお話。
そうそう、おじいさんのひげをつけて、がいとうを着て。
なつかしい・・・あれ、こんなに短いお話だったんだなぁ。
でもやっぱり、かっこいい。
ちいさいわたしは、きっとこの、男の子にも負けない
元気なピューンが好きだったのだ。

挿絵は一冊を通して遠藤てるよさんが描いている。
わたしが覚えている絵は、だれの手によるものだろう。
単行本だったか、短編集だったか、それとも教科書、副読本のようなものか、、、
いまとなっては遠い記憶のかなた。いつか再会できることを信じて、
地道に古本屋をめぐるとしよう。

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