記念碑的1972。
『ミーナの行進』 小川洋子 著 中央公論新社
この回想録で語られる1972年は、何を隠そう私が生まれた年である。
山陽新幹線、新大阪ー岡山間が開通し、川端康成が自殺し、ミュンヘンオリンピックで男子バレーボール日本チームが金メダルを獲り、ジャコビニ彗星が大接近するも流星雨は見られなかった、という。
これらエピソードの、一つとして私は知らなかった。
ミュンヘンオリンピックが開催されたということだけは、同級生に「みゆ」という子がいて、名前の由来を得意げに聞かされたから覚えていたが、金メダルのことも、ましてやイスラエル選手団が襲われたテロ事件のことも、恥ずかしながらこの本で初めて知った次第である。
というわけで、朋子とミーナの成長譚もさることながら、実際にあったエピソードと絡めての展開が、じつに興味深かった。
小川さんの作品では、映画化もされ話題になった『博士の愛した数式』も、プロ野球阪神戦と江夏投手のエピソードが巧みに盛り込まれていたが、詳細に下調べした出来事と物語をシンクロさせていく過程を想像すると、なんだかちょっとわくわくする。
この物語は大人になった朋子の回想であり、喘息持ちの従妹のミーナがマッチ箱に閉じ込めたおはなしのように、いつでも取り出して懐かしむことのできる「宝物の時間」である。
寺田順三さんの装丁・挿画とともに、夢のような一年間を味わえる一冊。
大人向けメルヘンともいえるし、朋子やミーナと同年代の少女たちにも読んで欲しい。中学生の読書感想文用教材にうってつけではなかろうか。
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